何故、千津美と藤臣くんはアメリカに旅立ったのかー
それを探る為に、まず千津美の、というよりは志野原姉妹の出生について考えてみたいと思います。
実は私は割と長い間、千津美…というか志野原姉妹の出生について、あるいくつかの疑惑?を、ずっと胸の中に秘めておりました。その一つは
「志野原姉妹の『親戚』は二人が存在を知らされてないだけで、実はどこかに存在しているのではないか」
本編の中で、千津美の両親、親族についての情報は本当に少ないものです。
『秋風揺れて…』の千津美のモノローグ「お父さんが死んで、お母さんが死んで、親戚もいなくて」
それと『パステル気分』で園部さんが言っていた「(志野原姉妹が)同じ親から生まれて、どうしてこうも違うのか」というセリフぐらいです。(園部さん〜怒)
けれども数少ないこの二つの台詞は、なかなか貴重な情報を私達に与えてくれています。
一つは、千津美とお姉さんは「同じ母親、同じ父親から生まれている姉妹」であるということ。
いわゆる異母姉妹とか異父兄弟でないということです。
そしてもう一つ興味深い言葉が、「親戚もいなくて」です。
前に書かれている「お父さんが死んで、お母さんが死んで」
この言葉は、千津美の両親が既に他界して、既にこの世に存在していないことが確定していますが、
「親戚もいなくて」
この言葉は少し事情が違ってくるのです。
もしも千津美の両親が家族や親戚から祝福されなかった、所謂「駆け落ち結婚」をしていた夫婦であった場合ー
二人の両親は、親戚付き合いができないのはもちろんのこと、自分の家族のことを娘達に話すことがどうしてもできなかったというケースが考えられます。
志野原姉妹は親族の存在を知らないだけで、二人の親族がどこかに存在している可能性があるのです。
しかし、読者の方のほとんどは、志野原姉妹の両親には、姉妹と同じような、穏やかで優しく、愛情深いイメージを持っていると思います。「駆け落ち」のキーワードはピンとこないのではないでしょうか?
それに志野原姉妹は両親の死後も、特に生活に困窮しているような描写はありません。
姉の結婚後、千津美が一人で住んでいた一軒家もなかなかの広さで、どうも借家ではないように私には感じられました。
経済的にもきちんとした両親像も感じられます。
それでは、もし志野原姉妹の両親が「駆け落ち結婚」だった場合、どのような事情が考えられるでしょうか?
次回、それを述べていきたいと思います。