以前、もう一つの掲示板でも書きましたが、(詳しくは「もう一人の千津美」という記事を読んで下さい)
『千津美と藤臣くん』シリーズを語る上で、どうしても語らなければならない漫画家さんが太刀掛秀子先生です。
ひかわ先生の作品と太刀掛先生の作品を読み比べていると、ひかわ先生の初期の学園物が、太刀掛先生の作品から強い影響を受けていることがはっきりと分かります。
「星のハーモニー』と「ミルキーウェイ』、『銀色絵本』と『なっちゃんの初恋』
特に太刀掛先生の一番の長編『花ぶらんこゆれて』という作品がなかったら、ひかわ先生のデビュー作の「秋風ゆれて」という作品は、千津美と藤臣くんは生まれてこなかったのでは?とすら思っています。
タイトルの最後が「ゆれて」であること。
物語の冒頭、千津美は姉が、るりは母が、最愛の存在が家を出ていく場面から始まるところ。
そして千津美の姉とるりの母のソニアは容姿が酷似しているなどの共通点があります。
もちろん物語の深い部分では、ひかわ先生だけの、誰も真似のできない価値観、個性が光を放っています。
るりが一方的に母親に去られたのに対し、千津美は自分から姉のことを新しい幸せへと背中を押すのです。
千津美の姉も、自分の幸せよりも千津美の幸せを大事にしています。
何よりも藤臣くんのキャラクター造形です。
藤臣くんは非常に男性性が強いヒーローです。
心身共に非常に強靭で、どんな女の子にも周囲の言葉にも、千津美への愛が揺らぐことは絶対にありません。
こういうヒーローは太刀掛先生の作品にはほとんど存在しません。
そしてもう一つ、『花ぶらんこ〜』のヒロインるりが「母親がフランス人のハーフの女の子」であることは、物語の上でとても重要な設定です。
この物語から多大なインスピレーションを受けている『秋風ゆれて』であるなら、この「ヒロインがハーフの女の子」という設定も、千津美のプロフィールの「裏設定」として存在していたのではないかと考えるようになりました。
「花ぶらんこゆれて…」は波乱万丈のラブロマンス大河であるのの対し、「千津美と藤臣くんシリーズ」は普通の?恋人同士の幸せな日常生活を切り取った物語です。
「ハーフの女の子」という設定を活かす物語を作るのはとても難しいと思います。
ですから、密かな「裏設定」として存在しても、表立ってストーリーに出てくることはなかったー
次回は、『千津美と藤臣くん』の本編のシーンの中に、謎を解く鍵を探ってみたいと思います。