千津美と藤臣くんシリーズの続編を読みたいという声は今でも多く聞かれまずが、ひかわ先生はもう続編を書くつもりはないとインタビューで答え、今もその言葉は守られています。
それでも私は、ひかわ先生は読者の方達にきっと伝えたかった「二人のその後の物語」があると長い間信じてきました。
そして最近では、漫画とは違った表現でで『銀色絵本』の続編は描かれていたと確信するようになりました。
それは数多くの美しいイラストの中に存在していたのです。
今回は、もし持っている方は、「ひかわきょうこカードギャラリー②」を是非手元に置いてこの考察を読んでみてください。
このイラスト集は素敵なイラストばかりですが、特に異国の空気の中にいる千津美と藤臣くんを感じる、3枚のイラストがあります。
1枚目は、石の階段に座っている千津美と藤臣くんのイラスト。
2枚目はオレンジ色の花の咲き乱れる花畑で二人がデートしているイラスト。
3枚目は自転車に乗っている千津美が帽子を風に飛ばされているイラストです。
まず、一枚目の石の階段に腰掛けている千津美と藤臣くんのイラストについて見ていきましょう。
このイラストの背景にある石の階段、蔦の生えている壁は、どう見ても大学の校内を思わせます。
そして千津美の傍には英語の本、その手にはエアメイルの封筒があります。
つまりこのイラストの千津美と藤臣くんは、同じ大学に通っていること、千津美が英語を学んでいること、海を隔てた「誰か」に手紙を書いていることが見て取れるのです。
本編の、「二人は違う大学に通っている」、「千津美は国文科に在籍している」設定とは違うことが描かれているわけです。もちろん千津美に海外に友人がいるなんてエピソードもありません。
これはどういうことでしょうか?
この謎も、千津美が「日本人とアメリカ人のハーフである」ことや、「親戚がどこかに存在している」裏設定があるとすると、イラストの場面に至るまでの過程が一気に浮かび上がってくるのです。
例えばこんな話は成り立たないでしょうか?
『銀色絵本』の物語が終わって、少し日が経った時、一人のアメリカ人が空港に降り立ちます。
彼が来日した目的は、ずっと絶縁状態だった志野原夫婦とその子供達を探し出し、和解を成就することです。
そう、この人物こそ志野原姉妹のアメリカの親戚なのです。
彼は幸運に志野原姉妹を見つけることができました(ここの部分でも長いドラマがありそうです。私は章さんが活躍したのでは?と思っています。)
彼は志野原姉妹に会えたことをとても喜んだことでしょう。それと同時に、二人の両親がすでに他界していたこと、他に頼るものがいなかった姉妹に何も援助も出来なかったことは悔やんでも悔やみきれなかったはずです。
そして姉妹をずっと守り支えてくれた千津美の義兄さん、藤臣くんには間違いなく感謝してもし切れなかったことは容易に想像できます。
そうなると次の展開として、この人物は、志野原姉妹に「どうか一度、アメリカの親戚達に会いにきてほしい」となるはずです。
会社員の夫がいて、生まれてまもない赤ちゃんを抱えたお姉さんは難しいかもしれませんが、千津美はまだ大学生ですから、すぐにアメリカに行くことは可能だと思います。
そして千津美の場合はアメリカに来ることだけではなく、
「私たちの住む街に良い大学があるんだ、良かったら功くんと一緒にそこで勉強してみないかー」
少し前に放送した朝ドラの『カムカムエブリバディ』ではヒロインが再会した祖母から、太刀掛先生の『花ぶらんこ揺れて…」ではヒロインの兄が、再会し和解したフランス人の親族から留学を勧められました。
千津美が親戚たちから留学を勧められるのは自然な流れだと思います。
本編の中でもきっと、千津美と藤臣くんは、できれば同じ大学に通いたかったと絶対に思っていたはずです。
二人は親戚の申し出を受け入れてアメリカに旅立ち、留学生活をスタートさせました。
思いがけない形で願いが叶い、楽しく充実したキャンパスライフを送っている千津美と藤臣くん。
このイラストはそんな二人の幸せな一場面を切りとったものではないでしょうか?
章さんなんか「俺も行く〜♡」などと言って、ついてきちゃいそうですね
次は、もう二つのイラストについて述べてみたいと思います。